こんにちは。SHIORI BOOKSのめぐみです。
本日ご紹介する本は武田百合子著「富士日記(上)」です。
夫武田泰淳と過ごした富士山荘での日記で彼女の処女作になります。
時代が大きく変化する中でも自身の生き方の軸を持ち続けた、その率直で飾り気のない表現の数々は今よみ返してもまったく古さを感じません。
素敵な人の暮らしをのぞける機会はそんなにありませんよ!
「富士日記(上)」ってどんな本?
![](https://hbb.afl.rakuten.co.jp/hgb/21422dd0.c53e781b.21422dd1.4aceb341/?me_id=1213310&item_id=19578888&pc=https%3A%2F%2Fthumbnail.image.rakuten.co.jp%2F%400_mall%2Fbook%2Fcabinet%2F7370%2F9784122067370.jpg%3F_ex%3D240x240&s=240x240&t=pict)
- 著者:武田百合子
- 初版年月日:1981年2月10日(文庫本)
- ページ数:474ページ(文庫版)
- ジャンル:随筆
夫(作家・武田泰淳氏)、娘(中学生の花子さん)、愛犬(ポコ)との富士山麓の別荘で過ごした日々の日記です。
東京赤坂の本宅と頻繁に行き来し、山のふもとの町での買い物や毎日の献立の記録、町の人との会話、夏は河口湖で泳ぎ、冬は尻すべりし自然のなかで暮らしたことが淡々と記されています。上巻は、昭和39年から昭和41年(1964-1966)のできごとが綴られています。
昭和、平成、令和と時代が進んでも、読まれ続けられるのではないかと思われる作品です。
「富士日記(上)」 こんな人におすすめします!
![書店に並べられた本](https://shioribooks.com/wp-content/uploads/2023/09/jessica-ruscello-OQSCtabGkSY-unsplash-3-1024x683.jpg)
昭和ノスタルジーに浸りたい人
昭和を知らない世代にもなぜか懐かしさを感じます。百合子さんと同じ時代を生きた人にプレゼントするのもおすすめですよ。
日記をつけている人、日記を始めたい人
たまに人の日記をのぞくのもおもしろいのでは。移動中にもさくっと読めます!
毎日の献立を考えるのに困っている人
百合子さんの献立は自由です!きっとヒントになります!
こころに残るページと言葉
![日本の街角の風景](https://shioribooks.com/wp-content/uploads/2023/09/richard-tao-jlJFU9QBfFc-unsplash-1024x576.jpg)
昭和40年10月8日 朝 ごはん、味噌汁、塩鮭、卵。(文庫P186)
昭和41年8月25日 夜 手製クッキー、玉ねぎスープ、サラダ、バナナ。(文庫P427)
百合子さんの献立には「こうあるべき」という決まりがないので、旅館で出てくるような朝食もあれば、カジュアルな夕食の日もあります。食べたいものを食べる、その時にあるものを食べる。そんな堅苦しさがないところがすきです。
「もういいの。話はあのときついたのだから。頸がはれたのは、三日経ってからだから。心配しなくていい。」(文庫P349)
百合子さんは東京に帰る運転中に、後ろから石を満載したトラックに追突されてしまいました。トラック運転手は、自分の非は認めるが、免許停止になると食い上げになるので警察の立ち合いは勘弁してほしいと言い、それを受け入れた百合子さん。
後日、武田邸に修理された車を納めたトラック運転手は、百合子さんが頸に包帯しているのをみて、財布から千円札を一枚ていねいに膝でシワを伸ばして差し出します。その運転手に対してのひと言です。その上、これから仲間のトラックに乗せてもらって帰るという運転手に、炊き込みカニご飯を、二人前弁当箱につめて車中で食べるように渡します。
![](https://shioribooks.com/wp-content/uploads/2021/09/zen5.png)
竹を割ったような性格とはこういう人のことを指すのでしょうね。
まとめ:どんな人にも日常がある
![裸電球と日本家屋](https://shioribooks.com/wp-content/uploads/2023/09/marisa-buhr-mizunaka-c9zqE0QvKIU-unsplash-1024x683.jpg)
![裸電球と日本家屋](https://shioribooks.com/wp-content/uploads/2023/09/marisa-buhr-mizunaka-c9zqE0QvKIU-unsplash-1024x683.jpg)
「富士日記」は20代のころから気になっていましたが、実際に読んだのは2、3年前とわりと最近です。
小説家の妻で別荘暮らし。
なんだか華々しさのイメージが先行して敷居が高そうで、なんとなく敬遠していたのですが、本を開いてみると、そこにはチャーミングで快活、誰にも媚びない一本筋の通った著者の飾らない生活がありました。
文中には何度か「ぶどう酒」と「魔法水筒」ということばが出てきます。ワインより“ぶどう酒”という響きのほうが口がまろやかになります。
最近は魔法ビンという言葉も使わなくなりましたが、マイボトルより“魔法水筒”はなんだか特別な飲み物が入っている気がして、このふたつの言葉を復活させたいなと密かに思っています。
![](https://shioribooks.com/wp-content/uploads/2021/09/zen5.png)
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そのモノが表す音を自分で作って繰り返し使って、意味を与えていくものが「言葉」なのかもしれません。
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