高齢者の昔話を貴重な記録に変える先例「驚きの介護民俗学」

こんにちは。SHIORI BOOKSのめぐみです。

本日ご紹介する本は民俗学者である六車由実さんが書かれた「驚きの介護民俗学」です。

高齢者の思い出をただの昔話にしてしまうのはもったいない、多くの人の記憶に残されている貴重な体験を掘り起こしたい、それを実践した著者の、誠実さと熱意がガンガン伝わる熱い本をご紹介します。

もくじ

「驚きの介護民俗学」ってどんな本?

  • 著者:六車由美
  • 初版年月日:2012年2月27日
  • ページ数:240ページ
  • ジャンル:社会科学

民俗学者の著者が、大学教員から高齢者用の介護施設に転職。これまでの経験を活かし、民俗学の手法「聞き書き」を用いて高齢者から子ども時代や青年期の話を聞いたところ、昔の思い出が出てくる出てくる…!それも認知症を患って意思の疎通が難しいと思っていた高齢者も、どんどん記憶が蘇ります! 高齢者から語られる内容は、民俗学研究時代には聞いたことがない戦後直後の産児制限の話、農家の馬喰の話、蚕の鑑別嬢の仕事などについてだった。介護現場で取り入れられる「回想法」とちがって「聞き書き」は話のテーマが決まっていないため、話が予期せぬ展開になることも。そこに驚きとともに喜びを持つ著者と高齢者の介護施設でのやり取りが綴られています。

こんな人におすすめしたい一冊です

高く積み上げられた本

「偉人伝」ではなく私たちのような「市井の生活史」に関心があり、それを生かしたいと思っている人

現在介護施設で働いている人や、身近に高齢者がいる人

福祉の仕事に関心はあるが、今までとは違う視点を取り入れたい人

記憶に残るページと言葉

仲良さげに歩く老夫婦

介護施設のレクリエーションで、ジェスチャーゲームを行った時の話。餅つきや脱穀機など、高齢者には経験があることをお題に出すので、ジェスチャーする高齢者も解答する高齢者もわかるのに、著者の六車さんだけがわからない!なぜか?それはぜひ読んでみてください!

ジェスチャーゲームは、いろいろな意味で可能性に開かれたリクリエーションであった。お題を出す私の予想が完全に打ち砕かれることで私自身が快感を味わえることはもとより、言葉を使った聞き書きだけではわからない、利用者の体に刻み込まれた記憶が一瞬にして蘇ってくるきっかけになることがわかった。

「驚きの介護民俗学」六車由美 p60より

まとめ:先人の知恵を無駄にしちゃだめだ

鬱蒼とした庭を歩く老人

この本を読んだ後、市民大学講座の一コマで、その土地の自然環境についてお話をする機会をいただきました。

受講生は全員60代以上、私よりもその街のことをよく知っている方が多い中、私が一方的に話すのはおこがましく感じ、この本をヒントに、受講生のみなさんにその土地の自然に関する思い出を教えてもらうことを思いつきました。

それぞれ用紙に書いてもらったあとに「どなたか思い出を発表してくれませんか」とダメ元で聞いてみたところ...手が挙がる挙がる…!

私は、受講生の方は人前で話すのは恥ずかしがるだろうと思いこんでいたので、「自分の思い出を聞いてほしい!」という積極的な姿にまず驚きました。

一人ひとりの思い出は、「夏になると海岸にハマナスの花を摘みに行くのが、子どもの日課だった。花は化粧品メーカーが買い取ってくれた」、「陸で船体の重さを支える盤木(ばんき)には、ワックスとしてアザラシの脂を塗っていた」、「今、鳥獣保護区になっている場所には、いくつも番屋があって漁期は賑わっていた」など、もう「へぇ~」という新鮮な驚きばかり。

皆さんの口からは、私が知るその土地の表情とは別の姿が、次々に生き生きと語られたのです。

現在、ハマナスはシカの食害で群落が減少し、鳥獣保護区内は車はもちろんテントを張ることも煮炊きすることも規制されています。

昔の暮らしは自然が身近にあったことが、それぞれの思い出から知ることができました。

私もこの本の著者と似たような体験をすることができ、あの時の受講生の方々の思い出を知り学べたことは、その町でのよい思い出として今でも思い返します。

そして最近は、身近にいる高齢者…両親から昔の話を聞いておくことがたくさんあるのではないか…そのように思っています。

めぐみ

でも身内だとお互い恥ずかしくて話しにくいかな。だからこそ話を聞いてくれる他人の存在は大きいのでしょうね。

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コメント

コメント一覧 (1件)

  • 介護関係の仕事をしているわけではありません。70を超えリタイヤした老人ですが、このような見地からの著書を出版されていることを、初めて知りました。
    よく、がん患者や余命幾ばくとかのヤフー記事に付くヤフコメに介護士の方が、昔の話しをすると凄く喜ばれるといったコメントが投稿されるのを見かけます。
    また、自分の父母や祖父母、そしてその頃世代の人達が語っていた小さな歴史が消えてしまうのは残念だと思っていました。
    比較にはならないと思いますが、かつての万葉集が庶民の声を拾ったように、庶民の声を拾い記録する努力が一つの遺産になるのではないかと思いました。人が目を向けていない大切な視点からの御本かと思いました。

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